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長期優良住宅の基準(by堀)
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている、優良な住宅のことを言います。
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて、その建築や維持保全等の計画が認定を受けることになります。
認定を受ける上で満たさなければならない基準は、以下の通りです。(国土交通省ホームページより引用)
①住宅の構造及び設備について、長期に良好な状態で使用するための構造・設備を有していること。
②住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
③地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
④維持保全計画が適切であること。
⑤自然災害による被害発生の防止・軽減に配慮されたものであること。
このうち、①の「長期に良好な状態で使用するための構造・設備を有していること(「長期使用構造等」と呼ばれます)」の内容は、さらに以下の4つの項目に分けられます。
1.劣化対策
2.耐震性
3.維持管理・更新の容易性
4.省エネルギー性
5.可変性※
6.バリアフリー性※
※印のものについては、共同住宅・長屋等の場合において適用になります。
具体的にはどのような基準になるのか、木造戸建て住宅の新築の場合でお話ししていきたいと思います。
適合させるべき基準がたくさんあるため、申請に必要な書類・図面も多数あります。
①-1 劣化対策
劣化対策とは、長期にわたり住宅の構造躯体が使用できるよう図ること。長期優良住宅の認定基準としては、
「住宅性能表示制度」(「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度)における
「劣化対策等級3:通常想定される自然条件および維持管理の条件下で、3世代(おおむね75~90年)まで大規模な改修を必要とする期間を伸長するための対策が講じられていると評価されるもの」相当のものと、さらに追加措置があります。
<劣化対策等級3相当>
・外壁の軸組等
地面から1m以内の外壁の軸組(柱・間柱・梁など室内側に露出していない部分)について、所定の構造・材質・薬剤処理のいずれかの組み合わせを採用すること。
・土台
土台に接する外壁の下端に、水切り(壁を伝ってきた雨水が内部に侵入することを防ぐ金物)を設置する。
及び、所定の防腐・防蟻措置をすること。
・浴室・脱衣室の防水
浴室及び脱衣室の壁・天井及び床組みに、防水上有効な措置を採用すること。
・地盤
基礎内周部及びつか石周囲の地盤に対して所定の防蟻措置を行うこと。
例:べた基礎など(内周部の地盤をコンクリートで覆う措置・基礎断熱工法の場合はこれになります)
・基礎高さ
地面から基礎上端まで・もしくは土台下端までの高さが400㎜必要。
・床下防湿措置等
所定の防湿上有効な材料で床下を覆う・若しくは外壁の床下部に所定の換気口を設けること。
例:厚さ100㎜以上のコンクリートおよび 厚さ0.1㎜以上の防湿フィルムで覆う
・小屋裏換気
小屋裏・軒裏に所定の給排気口を設置する。
<追加措置>
・点検措置
床下空間:区分された床下空間ごとに点検口を設置
小屋裏空間:区分された小屋裏空間ごとに点検口を設置
床下有効空間の確保:床下空間の有効高さは330㎜以上とする(ユニットバス下など、点検に支障が無い部分は適用除外)
これらの措置の内容を、所定の書類および平面図・矩形図等に記載するほか、使用する薬剤やユニットバス等について、根拠となる資料を添付する必要があります。
①-2 耐震性
耐震性とは、極めて稀に発生する地震に対しても倒壊・崩壊しない他、地震に遭遇後も継続して使用できるよう損傷の度合いの低減を図ること。長期優良住宅の認定基準としては、
「住宅性能表示制度」における「耐震等級(倒壊等防止)」の等級2相当以上(階数が2以下の木造建築物で壁量計算による場合は等級3)。
許容応力度計算等の構造計算も必要になります。申請の際には構造計算書、各構造図、金物・地盤調査の資料等を添付します。
※耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)とは、
地震に対する構造躯体の壊れにくさ を評価したものです。
数百年に一度程度発生する地震による力(震度6強~7)の1.0倍(等級1)・1.25倍(等級2)・または1.5倍(等級3)の力に対して、倒壊・崩壊しない強度がある建物、ということになります。
ちなみに等級1は、建築基準法で定められた耐震基準と同等、つまり長期優良住宅でなくても最低限満たしていなければならない基準です。
①-3維持管理・更新の容易性
維持管理・更新の容易性とは、設備配管について、維持管理(点検・清掃・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。長期優良住宅の認定基準としては、
「住宅性能表示制度」における「維持管理対策等級」の等級3に該当する措置が求められます。
これは、構造躯体に影響を及ぼさずに専用配管※の補修ができる・構造躯体及び仕上げに影響を及ぼさずに専用配管の点検・清掃ができる といった対策を講じていると評価したものです。
※専用配管とは、戸建て住宅の場合 水道蛇口・衛生機器等からの排水管(敷地内の最終ますまで)、給水管(水道のメーターまで)、給湯管(給湯設備まで)のことを言います。
具体的な対策としては、以下の通りです。
・コンクリート内埋込配管がないこと
配管周りのコンクリートを破壊・除去せずに配管の点検・補修が行えることが求められます。
・地中埋設管上にコンクリートを打設しないこと。
戸建て住宅の場合、上記とほぼ同様の内容です。
また、建物外部の土間床・駐車スペース等の部分で、配管の点検・補修の際に除去されても構造躯体に影響が無いと考えられる部分に埋設した管には、基準を適用しなくても良いことになっています。
・配管等の内面が平滑で、たわみ・抜け等が生じないよう設置されていること
内部に段差・凹凸がなく、滞留物が発生したり清掃に支障が出たりしないものである、ということです。
・排水管の掃除口又は清掃可能な措置が講じられたトラップ等が設置されていること
・主要接合部等(設備機器と専用配管の接合部、専用配管のバルブ・ヘッダー)又は排水管の掃除口において、点検・掃除可能な開口が設置されていること(床下点検口・天井点検口など)。
ちなみに上記のほか、共同住宅等の場合については、専用部の配管の他、共用の配管についても維持管理・更新についての基準が設けられています。
申請の際には、設備図・平面図に上記の内容、配管・点検口の位置等を明示します。
①-4省エネルギー性
省エネルギー性とは、必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。長期優良住宅の認定基準としては、
「住宅性能表示制度」における「断熱等性能等級」の等級5 かつ、「一次エネルギー消費量等級」の等級6の基準に適合する措置が求められます。
両方とも2022年4月より施行された新しい等級で、断熱性能等級5は「熱損失等の対策の程度がより『大きな削減』」とされており(ちなみに最高等級は7)、また一次エネルギー消費量等級6は「一次エネルギー消費量の削減対策の程度が「著しい削減」」とされています(こちらは等級6が最高)。
断熱性能については「外皮性能(建築物の外周の断熱性能)」の基準適合を計算によって確認する「性能基準」か、計算によらず、計画建築物の仕様を規定の基準と照らし合わせて適合性を確認する「仕様基準」があります。
一次エネルギー消費量については、所定の計算プログラムを使用することで計算し、基準適合を確認することができます。
認定申請時には基準に適合している旨を示す計算書、またその根拠となる断熱材・各種設備の仕様書・資料等を添付するほか、断熱にはつきものの問題として、結露の発生を防止する対策についても図面等に明示する必要があります。
②住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること
1戸建ての住宅の場合 :床面積の合計が 75㎡以上
※所管行政庁が別に面積を定めている場合は、その要件を満たすこと。
③地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること
良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること
認定を受けて建築しようとする長期優良住宅は、地区計画・景観計画・条例によるまちなみ等の計画区域内にある場合は、これらの内容に調和・適合するものとする。
適合しない場合、また都市計画施設(都市計画道路・公園など)の区域内等 建築制限のある区域内にある場合には、認定は行わないことを基本とする。
→「居住環境基準」と呼ばれ、所管行政庁ごとに定められているため、事前に所管行政庁へ確認が必要になります。
④維持保全計画が適切であること
・構造耐力上主要な部分(基礎・壁・柱・土台・小屋組み・床版・屋根版・横架材など)
・雨水の侵入を防止する部分(屋根・外壁・雨どい等)
・給水又は排水の設備
計画建築物の上記の部分について、点検項目、点検の時期、定期的な手入れ等、更新・取替の時期 といった内容に関する計画を策定し、「維持保全計画書」として申請の際に提出します。
⑤自然災害による被害発生の防止・軽減に配慮されたものであること
災害のリスクがある地域においては、そのリスクの高さに応じて所管行政庁が定めた措置を取ることになります。所管行政庁によって基準が異なり、例えば柏市であれば、計画の申請に係る建築物が「急傾斜地崩壊危険区域」および「土砂災害警戒区域」内にないこと となります。
長くなりましたが、以上の基準が、「長期優良住宅」として認定を受ける上で適合させる必要があるものです。低炭素建築物等認定と異なり、劣化対策・耐震性・維持管理など適合させる項目が多く、審査にも相応の時間が必要となります(新築の場合、着工までに所管行政庁への認定申請が必要です)。