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市街化調整区域について(by堀)
不動産の情報や、都市計画図等を見ているとよくみられる言葉、「市街化調整区域」。
都市計画区域内において定められる「市街化を抑制すべき区域」であり、市街化を推進する「市街化区域」とは対照的なものです。
※市街化区域・市街化調整区域に分けることを「区域区分」、または「線引き」といいます。
市街化調整区域内では、原則として開発行為(土地の区画・形質の変更。宅地とする整備工事なども)は許可されません。都市開発に関連する上下水道などのインフラ整備も、原則として行われません。
弊社事務所の南側の風景。事務所の側は市街化区域ですが、道路を隔てたこちらは市街化調整区域になっています。実際に田んぼが中心で、建築物はまばらとなっています。
弊社事務所が建つのは市街化調整区域。実際に周囲には住宅その他建築物が多く、上下水道もあり。
ですが、市街化調整区域でも宅地の多いところはあるので、役所での区域区分・用途地域の確認は不可欠です。
<建てられる建築物・工作物>
ですが、市街化調整区域内では開発行為が全く認められないわけではありません。例えば、
「農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を行う者の居住の用に供する建築物」については許可が不要となります。
さらに都市計画法34条に、開発許可が認められる条件が記載されています。
一:開発区域の周辺に居住している者の利用に供する公益上必要な建築物
又はこれらの者の日常生活の為必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗等
二:市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源その他の資源の利用上必要な建築物
三:温度、湿度、空気等について特別の条件を必要とする事業の用に供する建築物で、市街化区域内において建築・建設することが困難なもの
四:農業、林業もしくは漁業の用に供する建築物(一部開発許可が不要なものもあり)、又は市街化調整区域内で生産される農産物、林産物もしくは水産物の処理・貯蔵・加工に必要な建築物
五:農林業等活性化基盤施設の建築
六:中小企業者の行う他の事業者との連携、事業の共同化、または中小企業の集積の活性化に寄与する事業の用に供する建築物
七:市街化調整区域内の、既存の工場施設における事業と密接な関連を有する事業の用に供する建築物で、事業の効率化のため、市街化調整区域内に必要なもの
八:危険物の貯蔵または処理に供する建築物で、市街化区域内に建築等することが不適当なもの
九:前各号に掲げるもののほか、市街化区域内に建築・建設することが困難又は不適当として定められている建築物(適切な位置に設けられる道路管理施設、休憩所、給油所等)
十:地区計画・集落地区計画の区域内で、その計画に定められた内容に適合する建築物
十一:市街化区域に隣接又は近接している区域等で、予定建築物が開発区域及びその周辺の環境に支障があると認められないもの
十二:開発区域周辺の市街化を促進する恐れが無いと認められ、かつ市街化区域内で行うことが困難又は不適当と認められる開発行為で、都道府県の条例で区域・目的・予定建築物等を定められたもの
十三:市街化区域・市街化調整区域との区域区分がされる以前(線引き前)から、自己の居住や業務の用に供する建築物を建築する目的で土地の所有権等を有する者が、その目的に従って行う開発行為
十四:前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進する恐れが無く、かつ市街化区域内において行うことが困難もしくは著しく不適当と認める開発行為
いろいろと細かいですが、上記のようになっています。
市街化を抑制すべき区域であるからと言って、全く何も建てられないというわけではありませんが、一般的な戸建住宅は条件が合わないと建てにくいと言えます。
自治体によって、さらに建築できる面積に制限を設けていたり、リフォームに関しては扱いが異なったりするケースもあります。
<市街化は「原則として」されない地域>
建築物の用途の制限のほか、市街化調整区域内では上下水道やガス・道路の舗装、また生活必需品の店舗など、市街地であれば当然のようにある施設が整備されてないことがよく見られ、自治体での上下水道等の整備予定も原則としてありません。
建築を考える際には、上水の代わりに井戸水利用となったり、浄化槽を設置したりするなど、市街化区域に比べて建築のコストが増すことも考えられます。また、スーパーやコンビニエンスストア、学校・病院といった施設、バス停や駅などが遠く利用しにくい土地であることも考えられます。
<開発行為許可申請>
市街化区域・市街化調整区域のどちらでもそうですが、開発行為許可申請をするとなると、申請の前に関係各課への事前の相談や協議を行ったり、計画によっては都道府県等が開催する「開発審査会」において審議にかけられたりと様々な手順を踏むことになります。
建てたいものや土地の状況で変わってきますが、基本的に開発許可をもらうにはまず建築確認申請へ進むまでに相応の時間と手続きが必要となります。
(「開発審査会」は開催される日程が限られ、機会を逃すと大変待たされることもあります)
随分前になりますが、一度 市街化調整区域内で「食品の販売店」の建築の申請業務をしたことがあります。平屋で建物の規模も、敷地面積も小規模でしたが、市街化調整区域内であるため開発行為の許可申請が必要に。
計画地の周囲に比較的住宅が多く、「生活必需品の供給に必要な施設」と判断されたものでした。建築の条件は比較的楽にクリアできたものの、開発行為の許可申請はかかる日数も必要な書類も多く、やっと建築確認申請に入れたことでほっとしたのを覚えています。
建築までの手続きに時間と手間がかかり、生活インフラ等も整っていることが少ない市街化調整区域。建築するには難しいことの多い地域ですが、決して土地を利用できないわけではありません。
自治体ごとに許可基準も様々であり、また地域によってはある程度宅地化が進んでいる・上下水道が整備されているなど状況も異なってくるので、もしも市街化調整区域内の土地利用を考えるなら、その土地の属する行政庁へまずご相談されることが必要不可欠となります。
こちらは松戸市内の住宅。周囲は住宅街とさほど変わりなく見える地域なのですが、市街化調整区域です。市街化区域に近接した地域で一定の範囲内に概ね50戸以上の建築物が存在し(「連たん地域」と呼ばれます)、また区域区分日前からすでに宅地である土地の区域であったため、関係各課との協議の上で新築の許可が下りました。
こちらは野田市内の住宅。こちらは既に住宅が建っていた土地であること、建築物の用途・敷地に変更が無いこと・増築面積が規定の範囲内であることなど、様々な条件をクリアして開発行為等の規制に適合するとされ、建築確認申請へと進めることができました。