アメリカの住宅様式　ジョージアンスタイル　by宮崎

ジョージアンスタイルの歴史的背景

ジョージアンスタイルはコロニアル様式のひとつで、18世紀後半から19世紀初頭にかけてイギリスとアメリカで流行した建築様式です。特にアメリカでは初期の植民地時代からイングリッシュコロニアルと連なる建築の一環として発展しました。この様式はイギリス前国王のアン王女が亡くなり1714年ジョージ１世が王位を継承したジョージ王朝時代（1714年-1830年）のイギリス国王たちにちなんで名付けられ、その対照的な特徴やエレガンス（優雅さ、上品さ）が特徴です。

ジョージアンスタイルの背景には、植民地時代からのイギリスの影響が大きく関わっています。当時のアメリカは、イギリスの文化や建築様式が強く反映された社会であり、特に富裕層階級の間でその影響が顕著でした。また当時のイギリスの建築家たちの移住や関連書物がアメリカに持ち込まれ、そこで新たな発展を遂げることになります。

ことアメリカでは1700年代後期頃からこの様式で多くの住宅が建築されています。

ジョージアンスタイルの様式

ジョージアンスタイルの建築は、幾何学的な対称性と調和を重視しています。典型的な特徴としては、正面玄関がセンターに配置され、左右対称（シンメトリー）のデザインが用いられることが挙げられます。屋根は通常、寄棟屋根（ヒップ屋根）や腰折れ屋根（ギャンブレル屋根）で、落ち着いたフォルムが特徴です。

ヒップ屋根でレンガ外壁・軒の下部にある歯型装飾（ディンティル）等、’どっしり’とした風格の建物で、窓枠は大きく、パノラマ風の庭園を見渡せるように設計されることがあります。

＜ちなみに日本でも多い屋根に切妻屋根がありますが、この切妻屋根をゲーブル屋根（ルーフ）といいます。アメリカやイギリスの住宅ではアイポイントとなる屋根のデザインとして急勾配なものが多いですね＞

また、ジョージアンスタイルの外壁や装飾は、その多くが煉瓦や石灰岩、時には木材を使った重厚で耐久性のある建材が用いられ、その装飾は緻密かつエレガントです。特に窓枠や玄関のドア類には、細かい装飾や彫刻が施されることが一般的で、内部の装飾も重視され、高い天井や美しい階段、大理石の暖炉などがよく見られます。

ジョージアンスタイルの人気は、アメリカ独立戦争後も根強く、国内各地で多くの建築物がこの様式で建てられました。特にニューイングランド地方や南部諸州での普及が顕著であり、富裕層の邸宅や公共建築物、さらには政府機関の建物などにも見られます。

この様式の重要な影響力の一端は、アメリカの独立宣言が採択されたフィラデルフィアの独立宣言会議場にも見られます。この建物はジョージアンスタイルの典型的な特徴を備えており、その建築様式は政治的な象徴としても認識されています。

総じて言えば、ジョージアンスタイルはアメリカ建築史において重要な位置を占める様式であり、その対称的なデザインやエレガントな装飾は今日でも多くの人々に愛され続けています。

私も設計する上でフォルムを重視します

先にも書いたようにアイポイントからの窓の位置や屋根の取り合いなど、しばしばジョージアンスタイルを参考にしています。また重要視しているのは左右対称（シンメトリー）や上下での窓に位置、そしてエントランスやポーチのデザイン、最後に外壁材や装飾など。

弊社我孫子市湖北台では、ジョージアンスタイルではありませんがアイポイントからの窓のシンメトリー配置、破風装飾のディンティルやウインドウトリムなど採用しアーリーアメリカンスタイルで設計されています。また資金の関係でレンガは採用出来ませんでしたがカバードポーチとレンガ風サイディングでイメージを出しています。

また日本の住宅は武家屋敷か豪農家（古民家）以外、昭和に入ってから主に住宅メーカーによって洋風化されてきました。そしてそれ以前の住宅は、バラック小屋といっていい様でデザインとは程遠いものでが、ヨーロッパや開拓後のアメリカの住宅には日本住宅には無い重厚な造りや装飾など現代の住宅にも応用できる美しさがあります。

そしてジョージアンスタイルにもその起源としてのイギリスとの繋がりや、社会的・政治的な背景も含めて、この様式の魅力を今に伝えています。