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敷地内に異なる用途地域がある場合(by堀)
建築物を建築するうえで、重要となる「用途地域」。
都市計画区域内において、都市の環境保全や利便の向上のために設けられるものであり、建築基準法において建築できる建築物の種類や規模の制限などが地域ごとに定められています。
大きく分けて住居系・商業系・工業系の3種類があり、さらに13種類の地域に分けられています。
このような、色分けされた「都市計画図」が各市町村において公表されています。
原則として、敷地が属している用途地域の制限に従って建築をすることになりますが、一つの敷地が複数の異なる用途地域にまたがっている、というケースも少なくありません。そういった場合にその土地に係る制限はどのようになるのかお話ししていきたいと思います。
建築物の敷地が区域・地域又は地区の内外にわたる場合の措置については、建築基準法第91条(以下「法第91条」)にあり、条文の内容は以下の通りとなっています。
『建築物の敷地がこの法律の規定(第52条、第53条、第54条から第56条の2まで、第57条の2、第57条の3、第67条第1項及び第2項並びに別表第3の規定を除く。以下この状において同じ。)による建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する禁止または制限を受ける区域(第22条第1項の市街地の区域を除く。以下この状において同じ。)、地域(防火地域及び準防火地域を除く。以下この状において同じ。)、又は地区(高度地区を除く。以下この状において同じ。)の内外にわたる場合においては、その建築物又はその敷地の全部について敷地の過半の属する区域、地域又は地区内の 建築物に関するこの法律規定またはこの法律に基づく命令の規定を適用する』
複雑な条文ですが、( )内の条文や地域等に関しては上記の規定からは除かれます。
よって、法第91条に記載されていない建築物の用途(法第48条)や居室の有効採光面積(法第28条)、ほかには建築物の敷地面積の最低限度(法第53条の2)も、敷地の過半の属する地域の制限が適用されることになります。
例えば上記のように・・・
400㎡の敷地のうち、第1種住居地域の部分の面積が300㎡・近隣商業地域の部分の面積が100㎡であれば、面積の多い第1種住居地域の制限が適用されます(例として、近隣商業地域ではカラオケボックスが建築できますが、上記の敷地の例では建築ができません)。
居室に必要な採光については、その敷地のかかる用途地域が住居系か・商業系か・工業系かで、有効採光面積の計算式が異なってきます(住居系地域は商業・工業系地域に比べて厳しく=有効な採光面積が大きくなります)。
こちらも考え方は上記と同様、「敷地の過半の属する地域」の制限が適用されます。
一方、( )内に記載されている項目についてはそれぞれに異なる規定があります。
第52条および第57条の2・第57条の3は「容積率」について、第53条は「建ぺい率」についての条文です。
建築物の敷地が2以上の、異なる容積率(又は建ぺい率)の制限を受ける地域等にまたがる場合、
(当該各地域等の容積率(建ぺい率)の限度)× (当該各地域等の部分の面積÷敷地全体の面積) の合計
がその敷地全体の容積率(建ぺい率)の限度となります。
敷地面積の「加重平均」ともいう方法で、用途地域ごとに建てられる最大延べ床面積(又は建築面積)の合計が、その敷地全体で建築可能な延べ床面積(建築面積)の限度になります。
上記の敷地で容積率を計算すると、図のようになります。建築士の試験でもこのような計算問題がよく出題されます。
その他、
・第一種低層住居専用地域等内における外壁の交代距離(建築基準法第54条)
・第一種低層住居専用地域等内における建築物の高さの限度(法第55条)
・建築物の各部分の高さ(道路斜線、隣地斜線、北側斜線など。法第56条)
・日影による中高層の建築物の高さの制限(法第56条の2)
については以下の通りです。
これらに関しては、「建築物が2以上の地域、地区又は区域にわたる場合」、その地域等に属する建築物の部分ごとに規定が適用されます。
また日影規制については、
1)建築物が 異なる規制区域にまたがる場合
2)日影が 異なる規制区域にまたがる場合
の2通りを考える必要があり、
1)の場合は区域ごとに、計画建築物が規制の対象となるかどうかを確認し、一方でも対象となるなら建築物全体で規制を受けることになります。
2)の場合は日影の落ちる区域内それぞれに建築物があるものとして、規制を受けます(どちらの規制もクリアできる建築物にしなければならない)。
建築物全体が日影規制のない区域に建っている場合・また敷地全体が日影規制のない区域にある場合だとしても、近隣に用途地域の境がある場合、そちらの区域に日影規制は無いか・計画建築物の日影が落ちないか、を確認する必要があるのです。
用途地域は建築において大きな前提となり、確認申請の際にも、上の写真のように用途地域の境界線や用途地域ごとの面積・容積率等の計算は設計図書に記載する必要があります。
今回揚げた事項の他にも、敷地が防火地域(火災の危険を防除するために定められる地域)の内外や、高度地区(建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区)の内外にわたる、といったケースもあり得ますので、前もって役所でそれらの境界線の位置をきちんと確認しておくことになります。